インプラントの新たな展開
上顎では、切歯管・鼻腔・上顎洞の位置を確認し、下顎では下顎管とオトガイ孔の位置を確認する。
埋入する人工歯根の種類・サイズ・本数・位置・方向などを検討する。
支台部(アバットメント)の種類・サイズ・角度などを検討する。
上部構造をどういう様式にするかを検討する。
骨移植など、「オプション手術」をする必要性の有無を検討する。
以上に基づき、手術計画を立案する。
という流れになります。
さらに私の場合はより慎重を期し、「診断用ステント」を改良して「サージカルステント」を作製します。
従来のサージカルステントは手術を行う際のガイドとして、補助的な役割を果たしていたものですが、シム・プラントを用いることで、歯槽骨を含めた口腔内の立体的な画像情報が得られます。
さらに最近では、コンピュータによる設計・製造技術(CAD/CAM)を用いて作製された「サージガイド」という新しいサージカルステントが開発されました。
ここまで慎重に治療計画を完了しておけば、後の手術が患者さんに負担をかけないように時間的にも短縮できますし、無理のない設計が可能で、実際の手術での誤差や手術にともなうリスクを最小限に食い止める、より安全な手術が可能となるのです。
ここまで診査・診断が正確に行えれば、これから実際のインプラント治療に入ることになります。
しかし、その前に行わなければならない大切なことが、前にも述べましたインフォームド・コンセント(説明と同意)です。
これは患者さんがこれまでの説明を受けて、十分に納得して、最終的に純粋な自己決定を行うものです。
ですから、もしも少しでもわからないことがある場合は、何度でも質問して確認することが大切です。
また必要があればセカンド・オピニオンといって、別の歯科医師に確認を求めることもできますから、自分が納得いくまで説明をしてもらうことが肝心です。
私のところでは、このインフォームド・コンセントに十分時間を取っており、パンフレットをお渡ししたり、実際の流れをビデオで見てもらったり、写真や実物の模型を見せながら、よりわかりやすい説明に努めています。
欧米は契約社会といわれており、医療においても細部まで書面による契約を取り交わします。
日本でも最近では医療訴訟も増えてきており、いくつかの契約を取り交わすこととなりますが、最も大切なことは、医師と患者さんとの信頼関係がどこまでできているかということに尽きると思います。
読者のなかには、性格や相性を占うのによく使われる血液型占いに興味を持っている人がいるかもしれません。
それに水を差すようなお話をしましょう。
血液型占いでは、A型・B型.O型.AB型によるタイプ分けをしますが、これは、一九○一年にオーストリアのRが発見した「赤血球型」を利用したものです。
しかしその後、研究が進むにつれ、新たな「赤血球型」が続々と発見され、A型といってもその中には別タイプ以上もあることがわかってきました。
その上、白血球や血小板にもいろいろなタイプがあるのですから、厳密にいうと、「同じ血液型の人は世界中に誰もいない」といえるほど、複雑で膨大な種類の血液型が、実は存在することになります。
血液ひとつをとっても、それほど人間一人ひとりの成り立ちは、複雑かつ個性的にできているといえるのです。
こんなお話をしたのも、実は、インプラント治療というのは、患者さん一人ひとりで、治療法が違ってくるものだからなのです。
血液型が違うように、顔や顎の形、失われた歯の形や色、歯並び、噛み合わせ、骨の厚み、部分的な欠損なのかあるいは歯が全部ないのか等々、患者さん一人ひとりの違いは数え上げれば際限がありません。
さらに一番重要なのは患者さんの歯に対する思い入れ、考え方です。
それに対応して、使用する人工歯根の形状、長さ、太さ、表面加工の種類、埋入する本数、術式、骨増生の有無、さらに上部構造の種類など、さまざまに手法が異なってきます。
つまり、インプラントは、既製服(レディーメイド)ではなく、注文服(オーダーメイド)の治療なのです。
患者さん一人ひとりに違う治療をするといっても過言ではありません。
それだけ手間もひまもかかることが、おわかりいただけるのではないかと思います。
それだけに、ここではおおよその治療の仕組みを述べ、個々の事例については、ケーススタディーのなかから、あなたに近い治療例をじっくりと読み込んでいただきたいと思いま人工歯根の表面加工について前記のように、人工歯根の素材は純チタン(またはチタン合金)が主流となり開発されています。
その形状は、おおよそ次の二種類に分類されます。
スクリュー型、シリンダー型です。
おわかりのように、スクリュー型はネジに酷似しており、シリンダー型は、茶筒のような円筒形をしています。
スクリュー型・シリンダー型いずれのタイプも、人工歯根を埋入する際に手術の規格化と時間の短縮が可能であり、からだへのダメージが少ないことから、現在では主流になっています。
チタンにはすぐれた性質が多々ありますが、その一つに、表面に酸化膜をつくることがあげられます。
一般に金属は表面に被膜を形成する性質をもっていますが、チタンは特に酸化しやすく、この酸化物被膜が金属表面を覆い、腐食を妨げます。
人工歯根を歯槽骨に埋入すると、歯槽骨と人工歯根の間に酸化物被膜が形成され、この膜を通して酸素やイオンの移動が可能になり、生体そのものに近い働きをしてくれると考えられています。
しかし、この優れた特性をより一層高めるため、次のような開発が進められています。
それが人工歯根の表面加工です。
チタン表面に加工を施すことにより、歯槽骨と人工歯根が結合する接触面積が大きくなることと、結合する時間が早くなることとで、より安定性を得られることが大きなメリットです。
また、噛んだときの衝撃が人工歯根に加わりますが、この衝撃力を少しでも分散し、人工歯根の損傷を防ぐためには、歯槽骨と人工歯根が接触する表面積が広いほどよいのです。
こうすれば、人工歯根だけでなく、歯槽骨に加わる衝撃力も緩和されます。
現在、以下のような表面加工法が開発されています。
サンドブラスト処理チタンの表面にチタンよりも硬度の高い物質の粉末を当てて傷をつけ、ザラザラにするものです。
TPS(チタン・プラズマスプレー)処理チタン表面にチタンの粉末を吹きつけて、表面にチタン粒子を付着させ、ザラザラにする方法です。
HA(ハイドロキシァパタイト)コーティングチタン表面にハイドロキシァパタイトをコーティングします。
陽極酸化法チタン表面の酸化物被膜をさらに厚くする方法です。
以上の形状および表面加工を施した人工歯根は、患者さんの顎骨の骨質や骨量の状態に合わせ、最適と思われるものを歯科医師が選択し、患者さんの同意を得た上でインプラント治療に用いています。
現在は「二回法」が基本になっていますが、症例によっては「一回法」も行われています。
二回法ブローネマルク教授が開発した理論に基づいた手術法です。
支台部が歯肉から出ている埋入後、人工歯根は歯肉の下に隠れている歯肉を切開してから、支台部、人工歯冠を取り付ける人工歯冠を取り付けるための支台部(アバットメント)の装着手術をします。
幅広い分野のインプラントごとに用意すると煩雑になるため、インプラントの協力を得て共通データベースを開発する。
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